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クラウドソーシングサービス「ランサーズ」のプロデューサーです。Webサービスや構成要素(UIや技術)について書いています。

【シェアリングエコノミー最前線レポート】InstacartとDoorDashにみるオンデマンドデリバリーの現状と今後の展開


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2015/9/18〜25にかけて、プライベートでサンフランシスコ・シリコンバレーにいってきました。
目的は、最新のインターネットビジネス動向をキャッチアップ、現地でしか使えないサービスを使う、サービス開発体制・方法について学ぶです。

何回かに分けて、実際に使ってみたサービスや聞いた話をレポートします。初回はシェアリングエコノミー、オンデマンドデリバリーサービスです。

成長するシェアリングエコノミー

モノやスキル、空き時間や空きスペースなどを、マーケットプレイスを通してマッチングすることで価値を生み出すシェアリングエコノミー。
インターネットビジネスの最先端であるサンフランシスコ・シリコンバレーエリアでは、日本にはまだないサービスが提供されていたり、日本にあるサービスでも、日本より普及していたりします。

今回は、オンデマンドデリバリーにカテゴライズされるサービスを実際に利用し、中の人にヒアリングしてきた内容をご紹介します。
(宅配者と直接マッチングするわけではない(ピアトゥーピアでない)ので、オンデマンドデリバリーがシェアリングエコノミーかという話もあるかと思いますが、注文者に対して、購入代行者が時間や移動といったリソースを提供している点から、シェアリングエコノミーと分類します。)

オンデマンドデリバリーサービスとは

オンデマンドデリバリーサービスは、一言でいえば宅配サービスです。従来のデリバリーサービスと違う点は、スマホアプリですぐに頼める、宅配状況がリアルタイムで把握できる、宅配をしていない店の商品も注文できる等の点です。

買い手は、お店にいかなければ買えなかった商品をスマホで手軽に変えるようになります。店舗は、宅配人員やバイクなど宅配に必要なリソースを保有することなく販路を拡大できます。

アメリカのフードデリバリー市場は7兆円ともいわれており、オンデマンドデリバリーは、この市場のシェア取り・拡大を狙っているサービスといえます。

アメリカでは多くのオンデマンドデリバリーサービスが提供されていますが、代表的なInstacartと、今勢いがあるDoorDashをご紹介します。

Instacart(インスタカート)

アメリカで最も成功を約束された会社

Instacartは、2012年創業のサンフランシスコを拠点とする企業です。最新の時価総額は約20億ドル。アメリカで最も成功が約束されている企業(元記事)といわれています。

サービスフロー

登場人物は、注文者、購入者(shopperと呼ばれている)、配達者、 スーパーマーケットの4者です。

  • 注文者は、アプリを使って、スーパーマーケット・商品を選択する
  • 購入者は、スーパーマーケットで注文された商品を購入する
  • 配達者は、購入された商品を購入者からピックアップし、注文者に届ける
  • 注文者は、商品を受け取った後、今回の取引の評価する(これがSMSでできて便利。シェアリングエコノミーにおいて評価の蓄積は重要)

注文画面
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注文確定時に、売り切れの場合の代替手段の選択機能も用意されている
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SMSでの簡単な評価
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効率化のために購入者と配達者が分けられていますが、同じ人が担当することも可能なようです。分けることで、車やバイクを保有していない人も購入者として働くことを可能にしています。(ワーカー確保の重要性については後述します)

購入者は、基本的には割り当てられたスーパーマーケットに待機して、注文が入ると商品をピックアップします。担当のスーパーマーケットを固定することで、どこに何があるかを覚えるので、注文から配達までのリードタイムを削減することが可能です。

ワーカの報酬体系

購入者の報酬としては、1取引当たりの固定報酬、商品数に応じた変動報酬、注文者からのチップが基本的な報酬となります。
時給保証があり、3つの報酬を合わせても1時間あたり20ドルに到達しない場合、不足分をInstacartが補填してくれる仕組みになっています。
注文がたくさん入り効率よく働けばたくさん稼げますし、注文が少なかったとしても、最低賃金が保証されているので、ワーカは安定した報酬を得ることが可能になっています。

無事受け取り。牛乳は別のものが購入されていました。
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DoorDash(ドアダッシュ)

DoorDashは、2013年創業のパロアルトを拠点とする企業です。パロアルトにあるスタンフォード大学の学生らが立ち上げた若い会社で、Y combinatorの卒業生でもあります。
最新の時価総額は約6億ドル。フォーブスの「次世代の10億ドル規模のスタートアップ企業」にも選ばれています。

サービスフロー

登場人物は、注文者、レストラン、配達者(Doordasherと呼ばれる)の3者です。

  • 注文者は、アプリを使ってレストランとメニューを選択する
  • レストランは、注文を受け取って調理を開始する
  • 配達者は、レストランに向かって料理を受け取り、注文者に配達する

スーパーマーケットで買える商品と違い、料理はできるまでの時間がかかる点や、できてからの劣化が早い(冷めるなど)があるため、マッチングはより複雑になります。
DoorDashは、この点を独自のアルゴリズムで解決しており、この点が投資家から評価を受けているようです。

注文画面。レストラン毎に待ち時間が分かる
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ソースなど細かい選択も可能
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配達料は1ドル。チップも注文時に選択
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ステータスがリアルタイムに把握できる。配達者に電話することも可能
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冷めてなくおいしくいただけました。
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オンデマンドデリバリーの重要構成要素

InstacartもDoorDashも、基本的なサービス構成要素は、注文者(ユーザ)、購入代行者、店舗(Instarcartであればスーパー、DoorDashであればレストラン)と、これらのマッチング、購入や配達といったオペレーションです。

各要素の改善によって、以下のようなユーザ体験の向上が見込めます。

  • 購入可能な店舗の数が増える → ユーザの選択肢が増える
  • 購入代行者数の増加とオペレーションの効率化 → 注文してから手に入るまでの時間が短縮する

購入代行者の確保

どのサービスも積極的に購入代行者の募集をしています。
購入代行者の一番の関心ごとは報酬なので、各社、報酬を前面に出した募集を自社HPやアプリ内でかけています。

私のところに配達に来てくれたInstacartのShopperが、DoorDashの方が時給25ドルだから移ろうか検討しているといっていたので、兼用や乗り換えも起きていそうです。
特に、DoorDashと同じレストランデリバリーのPostmatesは、同じ25ドル訴求とガチンコ勝負の様子。

Instacart
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DoorDash
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Postmates
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購入可能店舗の確保・連携

多くの店舗から選択でき、その店舗の商品・メニューは何でも頼めるという状態は、この手のサービスにおいて強い優位性になります。
DoorDashがタコベルと提携した、セブンイレブンと提携したなどがニュースになるくらい注目されています。

特に、InstacartとWholeFoodsの提携の深さ(やり切り度合い)は素晴らしいです。ここまで連携すればWholeFoodsにもかなりの売り上げ増メリットがあると見込めます。提携のお手本のよう。
店内にShopper専用のレジがあったり、ピックアップ用のボックスが置いてあります。
Whole FoodsはInstacartの最初の公式パートナーになっています)

店内の至る所で、Instacartの訴求がなされてました。
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大手でも、スタートアップのプロダクトが良ければ普通に提携するところが素晴らしい姿勢だなと思いました。

マッチングとオペレーション設計

InstacartもDoorDashも、早く正確に配達するために、マッチングアルゴリズムと購入代行者専用のアプリをかなり磨いています。
高度なアルゴリズムをもとにアプリが指示を出し、購入代行者は指示に従って動いている形です。このアプリは、誰がどの店で何を買うべきか指示を出し、注文者の家までの行き方を示し、注文者とコミュニケーションが取れるようになっています。

先にも書きましたが、DoorDashは、注文者とレストラン、レストランと配達者をマッチングするアルゴリズムが優れいている点が高く評価されています。

アプリ以外にも、Instacartにおいては購入者と配達者を分けたり、購入者を同じスーパーに固定配置することで購入時間を削減したりと、役割分担やオペレーション設計にも随所に工夫がみられます。


この他にも、都市のカバレッジも重要な要素で、「○○がシカゴでサービス提供を開始した」などもニュースになっています。

Instacart vs Doordash (vs Uber?)

現時点では、Instacartはスーパーマーケットの日用品や生鮮食品、Doordashはレストランの完成した食事という棲み分けがされていますが、DoordashがInstacartの領域にまで踏み込んできています。というのも、2015年9月より、一部地域でセブンイレブンの商品配達をテスト的に開始しているのです。

実際、DoorDash創業者のXunさんは、「我々はフードデリバリー企業ではなく物流企業である。」とインタビューで答えています。今後、セブンイレブンだけでなくスーパーマーケットでの日用品、生鮮食品の配達も始めるかもしれませんし、物流といっているので、食べ物以外や他社の配達網になるなども考えられます。

同じシェアリングエコノミーの代表格Uberも、ドライバーにモノを運んでもらうことを検討しているといわれています。(たまにやっているアイスキャンペーンはフードデリバリーの検証といわれています)


DoorDash以外にも、PostmatesやGoogle Expressなど、多くのフードデリバリーサービスがあるベイエリア。今後も事業拡大や普及状況に注目していきたいと思います。
もう少し詳しく聞きたいなどありましたらぜひご連絡ください!

次回は、UberやLyftなどのライドシェアサービスについて書きます。


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